祖父から継承した宝物
私の祖父は所謂エンジニア、機械工でした。
戦前から海外に目を向け、時代を読み、職人気質で精確な仕事をしていて
地方で祖父の手がけた機械が、つい最近まで動いていたことがあるくらいです。
精確ゆえ、メンテナンスフィーが殆ど見込めず、残念ながら事業はうまくいかなかったようですが。
その祖父がこよなく愛していたLonginesやWALTHAMの手巻き懐中時計を
形見分けされました。
30年近く、ずっと箱にいれられたままで何のメンテナンスもしていなかったそうです。
でもゼンマイを巻いたら、驚くことに動き出したのです。
何か、祖父の “止まっていた時間” が30年の時を経て “再び動きだした” かのような
そんな気がしてならず、感慨深いものがあります。
その時計が刻む微かな音は、いつも祖父の悲哀や幸福を 感じさせてくれます。